中国古代の地理書『山海経』には、奇妙で不思議な生き物がたくさん登場します。
今回はその中から、災害を予知するとされる不思議な鳥「勝遇(しょうぐう)」をご紹介します。
紅い羽根をまとい、鹿のような鳴き声をあげるという勝遇。
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その姿も能力も、とても神秘的で想像力をかき立てられますね!
災害を予知するとされる不思議な鳥
![勝遇についての原文
晉郭璞傳 ほか『山海經18卷』[1],明刊. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2555513 (参照 2025-05-13)](https://tesusabi.com/wp-content/uploads/2025/05/digidepo_2555513_0051-1-1024x907.jpg)
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勝遇についての原文
原文(『山海経・西山経』より)
『山海経・西山経』に登場する勝遇の原文です。
玉山,有鸟焉,其状如翟而赤,名曰胜遇,是食鱼,其音如录,见则其国大水。
山海経・西山経
意味(やさしい日本語訳)
玉山には、一種の鳥がいる。
その見た目はキジに似ていて、赤い色をしている。
名前を「勝遇」といい、魚を食べる。
その鳴き声は鹿のようで、もし勝遇が現れたら、その国には大きな洪水が起きる。
勝遇の特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
名前 | 勝遇(しょうぐう/shèng yù) |
姿 | 赤い羽毛におおわれ、野生のキジのような姿 |
鳴き声 | 小鹿のような声で鳴く |
食性 | 魚を食べる |
特別な能力 | 出現すると洪水の予兆とされる |
生息地 | 玉山(山海経に登場する神聖な山) |
魚を食べるということは、玉山は魚が豊富な山なのでしょうか。
もしくは、魚のいる水辺まで飛んで降りてくるのかもしれませんね。
洪水を予兆するという存在からも「水」といのもキーワードかもしれません。
「勝遇」と「胜遇」の漢字の違いについて
『山海経』の原文には「胜遇」という簡体字が使われていますが、日本語では「勝遇」と書かれるのが一般的です。
「勝」と「胜」はいずれも「かつ・勝利」の意味であり、簡体字の「胜」は繁体字「勝」の簡略化された形です。
意味に違いはありませんが、使用する文字体系によって表記が変わります。
山海経に登場する神聖な山「玉山」
『山海経・西山経/西次三経』によると
又西三百五十里,曰玉山,是西王母所居也,
山海経・西山経/西次三経
とあり、勝遇はこの玉山に現れる鳥として記されています。
この玉山については、『穆天子傳』など他の古典でも「群玉之山」と称され、玉石が多く採れる神聖な地としての伝説があります。
山そのものが霊的な意味をもつことから、そこに現れる勝遇もまた、単なる鳥ではなく神聖な存在として捉えられていたのかもしれません。
また、中国神話において耳にすることのある山岳に、崑崙丘があります。
崑崙丘は中国神話での地理上、西にあるとされます。
そして玉山は崑崙丘よりさらに350里西方に位置しているともされます。
勝遇の魅力

勝遇はただの「奇妙な鳥」ではなく、災害の前触れとして現れる存在です。
古代の人々にとって、自然現象を動物の行動と結びつけて予兆とするのはよくあるよです。
勝遇もまた、姿・声・能力のすべてが神秘的に描かれている存在として印象的です。
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勝遇はまるで“自然の使者”のようだね
鳥という存在が、昔から人々の生活において重要なサインをもたらしてきたことを思えば、勝遇の話も自然信仰の延長にあるものなのかもしれません。
また、赤くて目立つ見た目と、鹿のような鳴き声という不思議な組み合わせが、
一度読んだだけでも記憶に残ります。
まとめ
『山海経』に登場する「勝遇」は、洪水の到来を知らせる予言の鳥です。
その姿や鳴き声は自然界に実在しそうで、でもどこか現実離れしている不思議な存在でした。
神話に出てくる動物たちは、現実には存在しないかもしれません。
でも、自然と共に暮らす中で生まれた「知恵」として、語り継がれているのかもしれない。
そんな想像をかき立ててくれる勝遇でした。
災害という怖さを含みつつも、勝遇のような「兆しを知らせてくれる存在」に
古代の人々がどれだけ真剣に耳を傾けていたのか、想像すると面白いですね。
『山海経』の中には、まだまだ不思議な生き物たちがたくさんいます。
これからも少しずつ、紹介していけたらと思います。
参考文献・出典
本記事の内容は、中国古代神話書『山海経』に記された「勝遇」の記述をもとに、
現代的な視点からその姿・象徴性を読み解いたものです。
以下の文献・資料を参考にしています:
- 『山海経 西山経』(晋・郭璞注)18巻本 明刊版
※国立国会図書館デジタルコレクションより参照 - 『山海経・西山経』原文(古典資料)
- 『穆天子傳』第二巻(癸巳:群玉之山の記述参照)
※ご興味のある方は、実際の原典や注釈書もぜひ手に取ってみてください。
『山海経』の世界は、読み込むほどに奥深く、今なお多くの想像と創作の源となっています。