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羽が生えた人々の国・羽民国|山海経に登場する空を飛ぶ異民族の伝承

羽が生えた人々の国・羽民国|山海経に登場する空を飛ぶ異民族の伝承 山海経
羽が生えた人々の国・羽民国|山海経に登場する空を飛ぶ異民族の伝承

羽民国(うみんこく)は、体に羽が生えた不思議な民族が住むとされる国で、古代中国の神話書『山海経(せんがいきょう)』に登場します。

『山海経』は、異形の存在や神話的な世界観が多数描かれている古代中国の幻想地誌ともいえる書物です。

hikari
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今回は、羽民国の人々についてまとめたいと思います!

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山海経に記された“羽のある人々”

原文(『山海経・海外南経』より)

『山海経・海外南経』には、「羽民国」という不思議な国が登場します。
そこに住む種族は、人間のようである一方で鳥のような特徴を持つとされています。

以下がその原文です:

羽民国在其东南,其为人长头,身生羽。
一曰在比翼鸟东南,其为人长颊。

山海経・海外南経

意味(やさしい日本語訳):

羽民国はその東南にあり、そこの人々は頭が長く、体に羽が生えている。
また一説には、比翼鳥の東南にあって、頬が長い人々が住んでいるとも言われている。

このように、羽民国は“人でありながら体に羽がある”という独特の姿を持つ種族が暮らす国として描かれています。

hikari
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人間の姿をしつつも鳥のような姿に近い、半人半鳥のような存在だね

また、一部記述の中には「畫似仙人也(絵に描くと仙人のよう)」ともあります。

羽民国の人々はただの異形の民ではなく、どこか神聖さをまとった存在としても捉えられていたようです。

hikari
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頭が長いっていう特徴からも仙人のようっていう説明にはしっくりきた!

羽民国の特徴

特徴内容
名前羽民国(うみんこく/yǔ mín guó)
姿頭が長い、体に羽がある、頬が長い
位置比翼鳥の東南

羽民国の姿|羽民国の種族は空を飛べたのか?

飛行能力の限界がある

羽民国の人たちは、空を飛ぶことができる存在として語られています。

「能飛不能遠(飛ぶことができるが、遠くまでは飛べない)」という記述があり、ただ羽があるだけでなく、実際に飛ぶ能力があると明記されています。

维基百科『三才図会』より引用

明代の『三才図会』には、羽民国の挿絵とともに加えられた説明にはこうあります。

〜長頬鳥喙赤目白首生毛羽能飛不能遠似人而卵生。

三才図会

訳:

頬が長く、鳥のくちばしを持ち、赤い目、白い髪、羽毛があり、飛べるが、遠くへはうまく飛べない。人に似ていて、卵から生まれる。

しかし、その飛行能力には限界があるらしく、
実際には地にに足のついた生活をしているようです。

hikari
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わざわざ、遠くまでは飛べないっていう設定もおもしろいね


空を飛ぶ存在は「自由」の象徴だった?

これは、ほとんどの国で共通する象徴なのかもしれませんが、
「羽がある」というのは、空を飛べる=自由で、神聖で、特別な存在をイメージさせます。

つまり空を飛ぶというのは、地上のルールから自由になった“特別な存在”を象徴するものでもあります。

しかし「遠くへはうまく飛べない」という不自由さが完璧ではないリアルを感じます。

hikari
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イラストや創作ネタにもピッタリなキャラ設定だね!


羽民国の位置

羽が生えた人々の国・羽民国|山海経に登場する空を飛ぶ異民族の伝承

山海経では、羽民国は「東南」の果てにあると書かれてあります。

  • 「其東南」=南山のさらに東南にある
  • 「比翼鳥の東南」=伝説のつがい鳥(夫婦の象徴)から見た東南にある

まとめ

羽民国は、体に羽が生え、空を飛べるという特徴を持っています。

古代の人々にとってこうした姿は、何らかの象徴的な意味を持つ存在だった可能性があります。

たとえば、羽があるという特徴は「自由」や「神聖さ」
あるいは「理想的な身体のかたち」などを意味していたのかもしれません。

しかし完璧な存在でもなさそうです。
羽民国は地上と空にある“間”のような存在として、古代人の想像力の中に描かれました。

山海経は“自分たちとは違う世界”へのちょっとした不気味さと、どこか魅かれる気持ちが入り混じった世界だと感じます。


参考文献・出典

本記事の内容は、中国古代神話書『山海経』に記された「羽民国」の記述をもとに、現代的な視点からその意味や象徴性を読み解いたものです。

記載されている原文や解釈には、筆者による意訳・注釈を含んでおります。

以下の文献・資料を参考にしています:

  • 『山海経 南山経』(晋・郭璞注)18巻本 明刊版
    ※国立国会図書館デジタルコレクションより参照
  • 高馬三良『山海経―中国古代の神話世界』平凡社ライブラリー(1994年)
  • 『山海経・海外南経』『大荒南経』原文(古典資料)
  • 『三才図会』(明・王圻 編)より羽民国図

※ご興味のある方は、実際の原典や注釈書もぜひ手に取ってみてください。
山海経の世界は、読み込むほどに奥深く、今なお多くの想像と創作の源となっています。

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