三星堆博物館の存在をこの旅で初めて知りました。
中国旅行といえば万里の長城や兵馬俑、上海の摩天楼など有名な観光地を思い浮かべる方が多いでしですか?
四川省の成都近郊にある三星堆博物館は、日本人旅行者にはまだあまり知られていないかもしれません。
観光を提案してくれたのは義姉。
四川の文化や歴史に触れるチャンスだということで、特に予習もせず、軽い気持ちで足を運びました。
けれどその博物館は…
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謎すぎる古代の神秘と、まるで異世界のような展示空間!
今回は、三星堆博物館の不思議な魅力と、実際に行ってみて感じたことを旅行記としてまとめます。
この記事を読んで、少しでも多くの方が三星堆という不思議な古代文明に興味を持っていただければ幸いです。
※ご紹介する写真は、動画を切り抜いているため一部荒いものがありますので、画質よりも「その場の雰囲気」を感じ取っていただければと思います。
中国で入籍した際の旅の思い出を綴っています。
同じように中国文化や国際結婚に興味をもつ方に、楽しんでいただけたら嬉しいです。
三星堆博物館に到着!アクセス情報とファーストインプレッション
三星堆博物館は四川省広漢市にあります。
最寄の大都市は成都。
中国の地図を見ると、成都から北東に約40kmほど離れた場所に位置しています。
三星堆博物館は成都観光の一部として訪れる人が多い場所です。
アクセス方法
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成都からだと40分くらいかな?
最寄駅の「広漢北」からバスかタクシーで行く人が多いかもしれません。
私たちは最寄駅の「広漢北」からタクシーを使いました。
公共バスを使う人も多いと思います。
バスを利用する場合では三星堆博物館の公式サイトの情報によると、
広漢13路バスに乗車し、広漢北駅 〜 三星堆博物館駅(10駅)とのこと。

外観はモダンで、まるで未来的な宇宙船のような建物です。
中国伝統の宮殿風建築ではなく、現代的なデザインに驚きました。
遠くから見ると、広大な敷地に佇む巨大な建物が印象的で、外からでも中がとっても広い博物館なんだなとわかります。
三星堆博物館と古代蜀の歴史的背景
三星堆遺跡の発見と歴史的意義
ここでは四川省広漢市にある三星堆遺跡に関する展示がされています。
実は三星堆遺跡の発見には興味深いストーリーがあります。
1929年、一人の農民が畑を耕していた時に偶然、翡翠や石器を発見したことから始まる。
しかし本格的な発掘は1980年代になってから、1986年に2つの祭祀用の大きな埋葬坑が発見され、世界を驚かせる数々の文物が出土。
その後も発掘は続き、2021年には新たに6基の祭祀坑が発見され、さらに多くの遺物が見つかっている。
三星堆遺跡とは古代「蜀」の王朝の遺跡 のこと。
約3,000年から4,500年前の青銅器時代に栄えた文明の痕跡です。
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私は三国志が好きなので、蜀と聞くと劉備や関羽・張飛などを連想します。
しかし、この蜀とはどうやらそれより古い「古蜀」の時代を言うそうで…。
三国志の蜀漢(220年〜263年)よりはるか昔、紀元前1600年頃から紀元前1000年頃に栄えた文明なのです。
しかもその文明というのが、日本でいう縄文時代 のどこか!
そんな時代に古蜀という王朝があったことに、まず驚きました。
古代中国の地理と文明
中国古代史を少し振り返ると、黄河流域を中心に発展した華夏文明(いわゆる「中原文明」)が主流とされてきました。
殷(商)や周といった王朝がその代表に上がるとされます。
しかし三星堆文明は長江上流の四川盆地で独自に発展した文明であり、中原文明とは異なる特徴を持っているのだそう。
この地理的な隔たり(四川盆地)が、三星堆文明の独自性を生み出した大きな要因とされているようです。
四川盆地は山々に囲まれた自然の要塞のような地形で、外部からの影響を受けにくい環境でした。
そのため、中原文明とは全く異なる美的感覚や宗教観が育まれたと言われています。
展示を見る前に、館内の映像シアターで15分ほどの紹介映像を鑑賞しました。
ナレーションは中国語でしたが、古代蜀王国の概要が解説されています。
映像では、現代の考古学的発掘の様子も紹介されていて、どのように遺物が発見され、保存されてきたのかも説明されていました。(中国語はわからないけど雰囲気は理解した)

第一展示室|三星堆文化の”顔”〜神秘的な青銅仮面の世界
展示のスタートは、さまざまな青銅仮面や人物像が並ぶ第一展示室です。
入室すると、まず目に飛び込んでくるのは、ガラスケースに静かに佇む不思議な表情の青銅人頭像たち。
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薄暗い照明の中で浮かび上がるその姿は、少し不気味でもありました
青銅人頭像の謎と魅力
巨大な目、張り出した耳、誇張された造形。
まるで神話の世界から飛び出してきたような青銅人頭像に、まず圧倒されました。


展示解説によると、これらの仮面は祭祀用のものと考えられていて、古代蜀の人々が信仰していた神々や祖先の姿を表現しているとのこと。
中でも「縦目」の特徴的な表現は、三星堆文化独特のものだそうです。
中国語のわかる夫が言うには、博物館内で流れる解説動画で「中国人らしくない顔の特徴をしている」と説明されていたそうです。
実際、これらの人物像を見ていると、典型的な中国美術で見られる顔立ちとは確かに異なるような…。
どこか遠くの土地からやってきた民族なのでしょうか?
移動してきた民族が独自の文化を形成したのでしょうか?
それとも、地元の人々が異界の存在を表現しようとした結果なのでしょうか?
もしくは、「この時代の表現としての流行り顔なのでは?」
なんて知識のないもの同士、会話をしながら鑑賞していました。
実は考古学者の間でも諸説あり、未だ確定的な答えは出ていないようです。
人物像
青銅人頭像に続いて展示されているのは、立像です。
これらもまた、とても特徴的でした。
腕を大きく曲げた像や、どこか動きのあるポーズを取った人物像たち。
その手には何かを通してあったかのような穴がありました。
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その手には一体、何を担いでいたんでしょう?
杖や武器、あるいは儀式用の道具だったのでしょうか。


これらの像は王や巫師(シャーマン)、貴族などを表していると考えられているそうです。
特に興味深いのは、その製作技術なんだそうです。
紀元前1000年頃の青銅器としては、とても精緻な技術が用いられていて、当時の金属加工技術の高さに驚く人も多いとのこと。
耳が尖っていたり、別の像は奇妙な冠をかぶっていたり…。
こうした特徴から、研究者たちは三星堆の人々が特殊な装飾や化粧、衣装を使っていた可能性も考えられているようです。
あるいは、これらは神話的な存在や霊的な世界と交流するシャーマンの姿だったのか…。
展示室を巡りながら、夫と「神様なの?それとも身近な人々をモデルにしてるのかな?」などとテキトーな話していましたが、実際、三星堆文明の発見は中国考古学に大きな衝撃を与え、教科書を書き換えるほどの重要性を持っているのだそうです。
第二展示室|神樹と神壇に宿る、古代人の信仰と宇宙観
第一展示室を後にし、第二展示室へと足を進めると、さらに広々とした空間が広がっています。
そこには高さ約4mの青銅神樹や神獣と神官像など信仰的なものを感じさせるものがいくつもありました。
巨大青銅神樹(神樹)の神秘
第二展示室の中央に鎮座する巨大な青銅の樹があって、これこそが三星堆博物館の最も有名な展示物の一つ、「青銅神樹」です。
高さ約4メートル、枝には鳥や花、果実のようなものが付き、可愛らしい雰囲気もありました。
青銅神樹は古代蜀の人々の宇宙観を表現していると考えられています。
根元から頂上まで、下界・現世・天界という三層構造になっていて、世界の構造についての当時の考え方を反映しているのでは?とも言われていたり。
展示ケースの周りを一周して様々な角度から眺めると、その度に新たな発見があり、飽きることがありませんでした。
金のなる木
第二展示室のもう一つの見所は「揺銭樹(ようせんじゅ)」です。
動画の一部を切り抜いたので画質が悪いですが、
この写真は「揺銭樹」というお金のなる木の一部です。
英語では「Money tree」と書いてありました。

揺銭樹は、枝に古代の貨幣(中国の古銭)にような装飾が付いた青銅製品です。
儀式や祭祀の際に使われたと考えられているようです。
木の形をした台座に貨幣形の装飾が並ぶ様子は、まさに「お金が実る木」。
一目見るだけで金運が一気に爆上がりしそうなくらい惹かれた展示です。
実際にはただの展示物なのに、なぜか「ありがたみ」を感じて、しばらく動けませんでした。
まるで“古代のご利益”が宿っているような迫力でした。
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金運が上がりますように…!
お願いしてきました笑
それにしても古蜀の時代からお金というものがあったのですね。
貝殻などを貨幣として使用していた時代だと思うのですが、すでに「富」や「交換価値」という概念が存在していたことがわかりますね。
展示を見ていると、古代と現代の共通点を発見するのも面白いですね。
神獣や鶏のようなもの
生き物のようなものの上に人が乗っているものや鶏のようなものなど。
神獣や瑞鳥などの類いでしょうか?
フォルムも丸みがかっていて、可愛いく思えます。


これらの動物をモチーフにした青銅器は、古代蜀の人々の信仰や世界観を反映しているとされます。
特に鳥のモチーフは多く、天空や神々の世界との繋がりを象徴しているのでしょう。
他にも鳥の頭部を模った青銅などもありました。
鶏かどうかはわかりませんが、鶏は世界的にも縁起が良く夜明けを告げる神様の使いなどとも言いますね。
東アジアの多くの古代文明でも鳥は特別な存在とされ、日本の神話にも八咫烏(やたがらす)のように神聖な鳥が登場します。
鳥は中国古代から神聖な生き物としてさまざまな瑞鳥や怪鳥が語られています。
特に太陽を運ぶとされる「三足烏(さんそくう)」や不死鳥の「鳳凰」などは有名です。
三星堆の青銅鳥もそうした神話的要素を持っているのかもしれません。
祭壇を担ぐ人?〜儀式と階層社会を表しているのか
祭壇のようなものを担いでいる人のようなものもありました。
1人で担いでいるあたり、奴隷などではなく特別な人物なのでしょうか。
見れば見るほど複雑で、どのような宗教的な意味が込められているのか不思議です。


どうやらこれは神官または巫師(シャーマン)が儀式用の祭壇を運んでいる姿だと考えられているようです。
古代蜀では、神と人間の間を仲介する役割の人物が重要視されていたようです。
彼らは特別な儀式を執り行い、天候の変化や豊作を祈願していたかもしれません。
また、祭壇の細部には複雑な紋様が施されており、儀式の重要性や神聖さを表現しているようです。
古代の人々の信仰や儀式について想像を巡らせるのは、とても楽しい体験でした。
目の前の展示物が数千年以上前の社会の姿だと思うと不思議な感覚です。
飛び出た目〜異形の神々と宗教的象徴
三星堆博物館で最も奇妙で印象的な展示の一つが、「目が飛び出した仮面」でした。
目から何かが飛び出ている不思議な造形です。
三星堆の中でも特に奇抜で謎めいた造形で、誇張された目・複雑な突起・滑らかな曲線が特徴的です。
個人的な感想は、まるで寄生虫にでも取り憑かれているようにも思えました…。

この突出した目は「全てを見通す力」や「霊的な視力」を象徴している可能性があるとのこと。
あるいは、トランス状態のシャーマンの姿を表現しているとも言われています。
どちらにせよ、通常の人間の姿からはかけ離れた表現で、何か超自然的な存在のようです。
この謎めいた表現こそが、三星堆文化の最大の魅力なのかもしれません。
展示の演出がすごい|古代×現代のセンス

私が一番気に入ったのは、「背景に装飾を映す演出」でした。
日本では古代物を展示する際、背景を装飾したりはあまりしないように思います。
華やかで神秘的で、展示空間そのものが“世界観”を作っていました。
博物館や美術館ではこういった空間や世界観も楽しみたいですよね。

また、実際に触れることのできる展示もありました。
古代の遺跡由来の石ならとてつもないパワーを得られそうな気がして撫でまくってきました笑
三星堆博物館は見て、感じて、体験する楽しさもありました。
最後はミュージアムショップへ|お土産も充実

見学を終えた後は、博物館併設のミュージアムショップへ。
ユニークでセンスのあるグッズがたくさん。
文房具や置物、食器やファッション雑貨などなど







揃えると小さな博物館が作れそうなグッズもありました。
ミュージアムショップはとっても広く、グッズを見て回るだけで1時間くらい経ちそうです。
感想まとめ|知らずに行ってよかった、だからこそ驚けた
三星堆博物館への旅は、まさに“偶然の贈り物”でした。
予習もなく、期待もせずに訪れたからこそ、展示ひとつひとつの驚きや感動がより大きく感じられたのかもしれません。
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また、海外での初めてのミュージアムでもあったから印象的でした
想像を超える古代文明の謎
三星堆文明の存在は、中国の歴史観を書き換えるほどの発見だったそうです。
それまで「黄河文明が中国文化の起源」という定説がありましたが、三星堆の発見により、長江流域でも同時期に高度な文明が栄えていたことが明らかになりました。
展示を見ながら感じたのは、古代人の想像力と技術力です。
現代の私たちが「不思議」「謎めいている」と感じる造形も、当時の人々にとっては明確な意味や美意識があったのでしょうね。
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文明に関する今後の研究も楽しみです!
近代的な博物館としての魅力
展示内容は中国古代・三星堆遺跡に関するものですが、館内はとても現代的でした。
見せ方もですし、プロジェクションマッピングの部屋があったりなど。
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堅苦しすぎない展示だったことも良かったです!
中国四川・成都への旅行を考えている方には、ぜひ訪れてみてほしい場所です。

実用情報まとめ
施設名:三星堆博物館(Sanxingdui Museum)
住所:四川省広漢市三星堆鎮
開館時間:9:00〜18:00(入場は17:00まで)
アクセス:成都駅から高速鉄道で広漢北駅まで約20分、そこからタクシーで約10分
公式サイト:http://www.sxd.cn(中国語・英語対応)
これで私の三星堆博物館の旅行記は終わりです。
皆さんも機会があれば、ぜひこの不思議な古代文明の世界を訪れてみてください。
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