『梅花心易入門』という本を読みました。
私は、易経は「変化を読む書」だと考えています。
そのときどきの状況に応じて、“ひらめき”や“気づき”を与えてくれる──直感力を磨くためのもの。
だからこそ、本書を読んだとき「生年月日からその人の金運・健康・性格まで占える」とされる解説に、驚きました。
今回は、そのような感想を含めて、本書を読んで感じたことを正直にまとめます。
私の資質は火風鼎|そこから見えた「整える力」
本書の中では、生年月日を使って「自分の本質となる卦」を導き出す方法が紹介されています。
それによると、私の資質は火風鼎(かふうてい)でした。
この卦は、器を整える・環境を熟成させる・支える役割にまわる、といった象意を持つ卦。
確かに、「表に出るより、周囲を整えることにやりがいを感じる」という面に思い当たるところがありました。
裏の性格は火天大有?“表と裏”という視点の面白さ
さらに面白かったのが、「裏の性格」という発想です。
これは、自分の中に潜んでいるもう一つの傾向を表す卦として紹介されています。
私の場合は火天大有(かてんたいゆう)でした。
火天大有は、「豊かさ」「自信」「成果が集まってくる」ようなエネルギーをもつ卦です。
一見すると火風鼎の“控えめさ”とは対照的。
「自分の中に、実はこういう力もあるのかも」と気づくきっかけになったのは、 この裏表の考え方があったからこそだと思います。
シンプルな構成だからこそ、“そのまま受け取る”危うさもある
本書では、生年月日から導き出される卦について、非常にシンプルな手順で確認できるようになっています。
構成としてはわかりやすく、初心者にもとっつきやすいと思いました。
しかし書かれている内容を「そのまま結果として信じてしまう」のには違和感を感じました。
易経は本来、「問い」に応じて変化するものだと思っていたので…。
その変化の文脈を読み取ることに醍醐味があるからこそ、「固定的にあなたはこういう人です」と卦だけで断じられるスタイルには、どこか違和感があったのです。
きっともっと複雑で、深い“読み解き”があるはず
もちろん、これは本書の内容が浅いということではありません。
むしろ私は、「この簡略化された方法の背後には、もっともっと複雑で奥深い理論や読み解き方があるのだろう」と感じました。
本書でも山蔭基英先生自身が「梅花心易は難解である」と記されています。
『梅花心易入門』といえども、やはりこの一冊だけで占えるようになるわけではないようです。
易の理解や実践の積み重ねが必要なのだと思います。
また、本書にはこのように書かれています。
だれの人生においても、自らの力の及ばない宿命的なものは10パーセントしかないのです。残りの90パーセントは、知恵と努力でどのようにでも変化させ得る
梅花心易入門
山蔭基英先生ご自身が生年月日だけですべてが決まるとは考えておられないこともわかります。
この一冊で“占えるようになる”わけではないけれど、易と向き合うための扉としてはとても興味深く、 私にとっては、「もっと学びたい」と思わせてくれる良い出会いでした。
六十四卦の解説が、“人格を持った存在”のように感じられたのは面白かった
一方でとてもよかったのは、それぞれの卦が人の資質として解説されていたところです。
六十四卦それぞれに、人格や特性が与えられているようで、 読んでいるうちにまるで卦を擬人化して眺めているような気持ちになりました。
「私は火風鼎で、裏には火天大有がある」というように、卦に親しみを感じるようになったのは、この本のおかげかもしれません
というように、卦に親しみを感じるようになったのは、この本のおかげかもしれません。
まとめ|“変化を読む”という視点は、やっぱり大切にしたい
『梅花心易入門』は、生年月日から個人の卦を導き出し、資質や運勢を読み解くという、いわば“命占”的なアプローチをわかりやすく示してくれる本でした。
ただ、私はやはり易は「今の状況にどう向き合うか」「変化の流れを読むもの」だと思っていて、 固定的に「あなたはこういう人です」と決めつけるような読み方には、少し違和感が残りました。
とはいえ、山蔭基英先生ご自身が「宿命的なものは10パーセントにすぎず、残りは変えていける」と説かれているように、 本書の真意は“固定すること”ではなく、“どう活かすか”にあるのだと、今は感じています。
“当たる/当たらない”ではなく、
「自分はどう易と付き合っていきたいのか?」を見つめ直す、そんな時間をくれた一冊でした。
『梅花心易入門』参考情報
- 書籍名:『梅花心易入門』
- 著者:山蔭 基英
- 出版社:八幡書店
- 初版発行:1996年