三才図会という資料を『山海経』の神獣や霊獣を調べていると、たびたび目します。
最初は「何の資料だろう?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
三才図会は、明代の中国で編纂された図入りの百科事典で、実はこの中に『山海経』に出てくる神獣や霊獣の図が多数収録されているのです。
この記事では、三才図会とはどんな本なのか、なぜ山海経と関連して語られるのかを、わかりやすく解説します。
はじめに|三才図会とは何か?
三才図会とは、1609年に完成した中国の図入り百科事典で、編者は王圻(おうき)とその子・王思義(おうしぎ)です。

三才図会の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
書名 | 三才図会(さんさいずえ/三才圖會) |
種類 | 図入り百科事典(類書) |
完成年 | 1609年(明代・万暦37年) |
編者 | 王圻(おう・き)、その子 王思義(おう・しぎ) |
時代背景 | 中国・明代(1368〜1644年) |
巻数 | 全106巻 |
主な内容分類 | 天文・地理・人物・動植物・器物・神話・外国文化 など |
特徴 | 約1,000点にのぼる精緻な図版付き。 山海経などの古典を引用しつつ、幅広い知識を網羅。 |
「三才(さんさい)」とは天・地・人のことを指し、天地自然から人間社会まで、あらゆる知識を図とともにまとめた書物です。
全106巻から構成されています。
この中には『山海経』や他の古代文献に出てくる神獣・奇獣たちの図解も数多く収録されています。
三才=天地人のこと
書名にある「三才」は、儒教的な世界観における三つの要素を指します。
天(自然)
地(地理)
人(社会・文化)
この三つの領域をカバーすることで、あらゆる知識を網羅しようとしたのが『三才図会』です。
どんな内容が載っているの?
この百科事典では、全106巻の内に以下のような幅広いジャンルの知識が収められています。
- 天文・気象・暦法
- 地理・山川・国土
- 動植物・鉱物
- 医学・薬草
- 人物・服飾・器物
- 儀礼・宗教・制度 など
それぞれに細密な挿絵が添えられており、視覚的にも楽しめるのが特徴です。
例:異国の紹介や神話の世界も

たとえば、「西洋人」の服装や生活様式、インドや日本など外国の風俗、さらには伝説上の動物(霊獣や神獣)まで登場し、古代中国人の世界観や想像力の豊かさを感じられます。
日本への伝来と影響
三才図会は江戸時代の日本にも伝来し、多くの知識人や武士階級に愛読されました。
特に絵入りの構成は、当時の日本でも影響力が大きく、日本の『和漢三才図会』(寺島良安によって江戸時代に編纂)にも繋がっています。
なぜ三才図会が『山海経』の研究に使われるのか?
視覚的に「山海経の世界」を伝える資料だから
『山海経』自体は基本的に文章だけの書物です。
想像上の生き物の描写はあるものの、図はありません。
そのため、「この獣はどんな姿だったのか?」を知るために、後世の人々はそれを図化した資料を求めました。
三才図会には、そうした神獣・霊獣の絵が掲載されているため、
「山海経に出てくる〇〇はこのように描かれていた」
というイメージを補う資料として重宝されているのです。

文化的・想像的解釈が入っていることに注意
ただし、三才図会の図はあくまで後世の人々の想像に基づいたものです。
必ずしも『山海経』本文そのままの姿ではありません。
それでも当時の人々が、どのように『山海経』の内容を受け止め、視覚化しようとしたかを知る上では貴重な資料です。
まとめ|『山海経』の神獣を視覚で味わうなら三才図会もチェック!
三才図会は、『山海経』の補助資料として、とてもオススメです。
特に「文字からだけではイメージが湧きづらい」神話世界を、絵で補完する視覚資料として活用されています。
もちろん、それは「正確な再現」ではなく「後世の想像」も多分に含まれていますが、
その分だけ、歴史の中で『山海経』がどのように解釈され、受け継がれてきたかを感じ取れる資料でもあるのです。
おまけ:デジタルで読める三才図会
以下のようなサイトで『三才図会』の図版をデジタルで見ることができます:
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